何者かになりたい
三連休だ
社会人に与えられたオアシスの日
それなのに気分が冴えない
原因は分かっている
台風の気圧の影響と
期末なのに営業成績を上げられていなくて職場のお荷物状態の私
連休後に職場に行くのが憂鬱だからだ
それでも何かしなければと近郊の観光スポットに行って一眼レフを構えてきた
カメラを趣味にしてみてからまだ日が浅い私
撮った写真は、おじいちゃんの慰安旅行に連れて行かれたデジカメに収まっているような安っぽいものばかりで
ほとほと嫌気がさした
さらにその目的地に行くまでの道は悲しくなるだけだった
職場の先輩に紹介された男の子と一回だけドライブに行った時に通った道だ
その人は明るくて、気遣い上手で、家族と仲が良くて、生活を楽しんでいて、ドライブ中に大きな声で歌う愉快な人だった
一日一緒に過ごしただけなのに好きになった
この人とこの先も一緒に過ごせたらどんなに楽しいだろうかと思った
最後、ドライブが終わってお別れの時
相手が「また」という言葉を言ってくれなくて、私ともう会う気がないのを知った
私も私で相変わらず「また」という言葉が言えなかった
それでも私はこのときの自分のことを誇りに思う
「また」なんて言葉を発しなくてよかった
これ以上醜い女にならなくてありがとう
車から流れるクリープハイプの掠れた声を聞きながら
中古の軽自動車を運転している私を可哀想だと思った
私は本当に毎日可哀想だ
私は他人、特に異性から好意を向けられたことが一度もない
だから、自分の幸せは自分で作ってあげなければいけないと思っている
ドライブしながら芸人のラジオを聴いて笑い
写真を撮り趣味を持っているようなフリをして
旅行に出かけて黄昏てみる
そうやって幸せであるフリをしなければ私は本当に可哀想な人間になってしまう
でも、いつまで一人で自分の幸せを工面しなければいけないんだろう
私には覚悟がない
他人に受け入れてもらう覚悟がなければ、自分で生きて行く覚悟もない
早く、早く、早く